卵巣腫瘍
卵巣腫瘍
卵巣は子宮の両側左右一対にある母指頭大の小さな柔らかい組織ですが、女性ホルモンを分泌する女性にとって重要な臓器です。
卵巣にはいろいろな細胞の元があるので卵巣腫瘍はたくさんの種類があります。
卵巣腫瘍の特徴は、サイレントキラー(静かな殺人者)といわれるぐらい、ほとんど無症状の内に大きくなるという事です。
腫瘍の小さいものは、検診や診察時にたまたま発見される事もあります。
また、下腹部が張るとか、スカートがきつくなる(太ったと思っている事も!)などという事もありますが、そのような時にはかなり大きくなっている事もあります。
卵巣腫瘍には、良性のものと悪性のもの(卵巣がん)があります。また、腫瘍内容によってのう胞性と充実性に分けられます。
良性は、卵巣のう腫といわれ腫瘍の中身が水様性のものが多く、他に粘液性のものや、皮様のう腫(成熟のう胞性奇形腫)という脂肪や毛髪などを含むものがあります。
若い人から高年の人まで広く見られますが、20~30代の人に多いようです。10代や稀に、それ以下の人にも見られます。
卵巣腫瘍の10%位は充実性腫瘍で、硬いこぶのようだったり、のう胞性の中に充実性の部分があるものもあります。
充実性には良性型、中間型、悪性型の3タイプがあり、注意が必要です。

<卵巣腫瘍茎捻転>
卵巣腫瘍の症状は、無症状の事が多く痛みがある事はあまりないのですが、卵巣が根元からねじれて茎捻転を起こすと、激痛、ショック状態になり緊急手術が必要になります。
検査
内診や超音波検査で診断を行います。これに腫瘍マーカーを加えると、かなり良性悪性の区別もつくようになります。
CTスキャンやMRIなど画像診断も行います。
治療
良性で小さいもの(直径5cm以下)は、経過観察(3カ月ごとくらい)をします。
卵巣のう腫と思われるものでも、ホルモンの作用で消えてしまうものもあるので、すぐ手術という訳ではないのです。
良性卵巣のう腫でも6cm以上で常にあるものは、手術対象になります。
放置しておくと茎捻転を起こしたり、将来悪性化する事があるからです。
今の手術方法はほとんど、腹腔鏡手術で腫瘍の部分だけを摘出します。
ただし、悪性が疑われたり、過去の手術歴があり癒着が強いなど、腹腔鏡では難しい場合もありますので、個々に適応は決められます。
卵巣がんの場合は、手術と抗がん剤による化学療法(当院では行っていない)です。
手術は進行状態に応じて、子宮、卵巣、周囲の組織を摘出しますが、1期で妊娠を希望される時は、がんの発生していない卵巣と子宮を温存する手術を行う事もあります。
卵巣腫瘍は、症状がほとんどなく、発見が難しい疾患です。
子宮がん検診(自己採取ではなく内診もする検診)時や診察時に偶然発見される事もあるので、子宮がん検診で異常がなくても、毎年検診を受ける事は大事です。
また、子宮筋腫などで子宮を摘出した方でも、卵巣が残っていれば、知らないうちに卵巣腫瘍ができている事もありますので、子宮がない方でも卵巣のチェックは必要です。