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かつて性病といわれた病気は、今は性感染症(Sexually Transmitted Diseases 略してSTD)と何かかっこよく聞こえるような呼び名になりました。昔の性病は”特殊な環境にある女性“とその客である男性が主に罹る感染症とされてきました。しかし最近では性の自由化、低年齢化が進み感染は極普通の日常生活を送っている人の間に蔓延するようになってきました。STDの扱われ方も”性病予防法“から”感染症新法“(1999 4~)に組み込まれ一般的な感染症と同等に扱われるようになりました。 さて、STDはかなり市民権を得て(?)ふつうに心配されるようになった感はありますが、まだまだ一般的には知識不足かと思います。よく当院にも“セイビョーの検査をしてください”といっておいでになる方がおりますが、“いろいろ種類がありますが、何を検査しますか?”と聞くと“サァー?”と答えが返ってきます。STDはドンと一括して検査できると思っているようです。STDはHIVから肝炎までいろんな種類がありそれぞれ検査法、治療法も違います。
そこで当院で頻度の多いSTDbP〜bRについて少し説明します。
bP クラミジア感染症 最近10代〜20代前半の若い女性に最も増加しているSTDです。どこかで1度は聞いたことがあると思います。女性はかかっても無症状のことが多いので知らずに罹っていることもあります。
・ 原因 :クラミジア・トラコマチス (昔は目の感染症だった) ・ 潜伏期間 :1〜3週間 ・ 症状 :女性は、おりものが増えたり軽い下腹痛や排尿痛など軽微な症状が多く、全く症状のないこともあります。しかし中には腹膜炎や卵巣膿瘍など重篤になることも。 治療していないと不妊症、また妊娠しても子宮外妊娠や流早産を起こすこともあります。 赤ちゃんには分娩時産道で感染し結膜炎や肺炎を起こします。 男性は、尿道炎として症状がでやすい。 ・ 検査 :綿棒で子宮頚管から検体をとる。血液検査でのクラミジア抗体陽性は感染の記憶なのでそれだけでは治療の対象にはなりません。 ・ 治療 :抗生物質の内服治療 重症になれば入院して抗生物質の点滴も。大事なことは二人で検査をしてふたりとも陰性になるまではセックスはしないことです。
* オーラルセックスでも感染するので性器だけではなく女性の咽頭からクラミジアが検出されることもあります。
bQ 性器ヘルペス クラミジアの次に多いのが性器ヘルペスです。原因となっている単純ヘルペスには口唇や口腔にでるT型ウイルスと性器に出るU型ウイルスがありますが、最近ではオーラルセックスによってT型とU型の住み分けがはっきりしなくなっています。セックスやデイープキスで皮膚の小さな傷からウイルスが入り込み痛い水泡や潰瘍を形成し、治っても再発することが問題です。
・ 原因 :単純ヘルペスT、U型 ・ 潜伏期:2〜10日 ・ 症状 :感染しても無症状のものもあります。(体の抵抗力が強い、ウイルスの量が少ない)
初感染・・性交後3〜7日で外陰部にかゆみ→痛みがでます。外陰部に左右対称な水疱や浅い潰瘍ができ、とにかく痛いのが特徴で排尿困難になったりします。熱が出たり、足の付け根のリンパ節が腫れるのも特徴です。 再発型・・不顕性感染や初感染治療後もウイルスは神経細胞に潜んでいるので疲労や月経、体力抵抗力の低下などを契機に外陰部に再発します。痛みはありますが初感染より軽い。下肢のしびれなどの前駆症状で再発を察知できることもあります。
* 妊娠中再発することが多い。経胎盤性には感染しないが分娩時産道で感染し、新生児脳炎や肺炎をおこすので分娩時に再発しているときは帝王切開をします。
・ 治療 :無治療でも2週間位で治りますが、抗ウイルス剤の内服で病期を短縮します。重症の場合は入院点滴。抗ウイルス剤の軟膏を使うこともあります。潜伏するウイルスを根治することはできないので再発予防のためには誘因となる体力や抵抗力の低下に気をつけて生活することが大事です。
bR 尖形コンジローマ 外陰部にニワトリのトサカ状のイボができる。ヘルペス同様ウイルス感染する。 このウイルスの感染は子宮頚がんの発生と関係している点が重要です。
・ 原因 :ヒトパピローマウイルス(HPV) ・ 潜伏期:数ヶ月 ・ 症状 :外陰部や膣にニワトリのトサカ状のイボのような腫瘤ができる。痛みやかゆみはありません。 ・ 治療 :自然に縮小することもある。2週間位して変化のないものは電気メスやレーザーで機械的に治療するか抗がん剤の軟膏を塗布します。目に見える病変は消えてもウイルスは潜伏しているので再発もあります。
* 子宮頚がんとHPV HPVには良性型と悪性型があり子宮頚がんの発生に関係しているのは悪性型(いくつかの型がある)です。尖形コンジローマ=子宮頚がんではありませんがどちらもHPVが原因になっていますのでコンジローマの既往のある人はもちろんそれ以外でも年齢を問わず(10代でも)性交渉の経験のある人はHPV感染の可能性があるので子宮頚がん検査を受けるようにしましょう。細胞診でHPV感染が疑われるときはHPVタイプにより将来がんになる可能性のあるタイプか否かの検査もできるようになってきています。
bO(番外)膣カンジダ症 婦人科外来で最も多い疾患はカンジダです。感染経路はセックスだけではないので番外としました。
・ 原因 :カンジダ(真菌) カビの一種 ・ 潜伏期間:不定 ・ 症状 :性器周辺の強いかゆみとカッテージチーズ状のボロボロしたおりものがたくさんでます。発赤や腫れた感じにもなります。 ・ 治療 :抗真菌剤の膣錠を7〜10日間くらい使用します。外陰部のかゆみが強いときは抗真菌剤の軟膏も使用します。
* 膣・外陰カンジダ症はセックスだけでなくお風呂やプール、温泉、タオルなど日常生活の中でも感染するので性交渉のない子供でも罹ります。症状が軽いときには自然に治ってしまうこともあります。治療してもカンジダは膣内に残り体力や抵抗力の低下、抗生物質などをきっかけに再発します。
“冷え“ていませんか? ・ 淋病 :淋菌による。最近増加しています。 ・ 膣トリコモナス症 :トリコモナス原虫による。泡立った臭い黄緑色のおりものが増加。 ・ 梅毒 :梅毒トレポネーマによる。昔のSTDの代表。10年以上かけて進行。 ・ HIV :ヒト免疫不全ウイルスによる。潜伏期間が10年以上と長い。先進国で感染者が増加しているのは日本だけ。
STDはなぜ怖いか? “STDになったって薬を飲めば治るんでしょ”などと甘く見てはいけません。 まず、STDは無症状や軽い症状のことが多く感染の自覚のないまま生活している人や潜伏期間中の人もいます。“自分は大丈夫”と思っていてもいつ感染するか、感染源になるかわからないのです。特に女性は男性よりも症状の出ることが少なく、慢性的な骨盤内の炎症となり、不妊症や子宮外妊娠、流・早産、母子感染の原因にもなります。女性にとってのリスクは大変大きいのです。早期発見、早期治療も大事ですが、予防するに越したことはありません。
STDの予防 ・ やはりコンドームが一番です。ただし正しい使い方をしないと意味がありません。 コンドームはペニスが勃起したらすぐつけましょう。射精する直前では遅いのです。 裏表を確認し爪などで破かないようにつけましょう。抜くときには特に注意しましょう。 コンドームの使い方も男性まかせにせず女性も知っておくことは大事です。
・ パートナー同士STDの検査を受けましょう。STDはお互いの問題ですからどちらが悪いということでなくふたりで検査を受け安心して生活しましょう。もちろん浮気は厳禁です。 |